今日の謙也はいつにもましてうっとうしかった。何や知らんけど辛気くさいオーラ醸し出して「白石構ってくれへん?」って目で言うとる。こう、なんちゅーか、うざい。わざと構わんかったら謙也の感情は昼休みに爆発した。 「俺ほんま死んだ方がマシや!」 「ほな今倒した椅子片付けや」 ガタンってけったいな音したで。謙也はハッと我に返って椅子を直す。心ここにあらず、ってか。典型的な「恋は盲目」とかなんとかそういうんやな。 「と何かあったんか」 「いや、なんもない」 「なんもあらへんのになんでそない悩んどるん」 「なんもあらへんから悩んどるんや」 謙也はまたごっついため息をついた。だから似合わんて。自分うるさいだけが取り柄やんか。謙也からうるささ取り除いたらただのスピスタしか残らへんし。 「勉強会やろうって話したんや」 「おお、そうやったな。でどうなったん」 「まだ日時しか決めとらんねん」 「どうやったらそうなるんか俺さっぱりわからんわ…」 日時決められるんやったら早よ場所決めればええやん。ていうか日時と一緒に決めとけやそんなん。謙也がぶつぶつ言い訳しとったから短くまとめて話せ!言うたら、目を泳がせた謙也は苦笑いしつつ言うた。 「俺の家に呼ぼう思ってん、何か勇気出んかった」 「自分いっぺん死んだらええんとちゃう?」 俺かて好きな子家に誘うのは緊張するけど、下心とかはそこには含まれてへんとは言い切れんのだけど、メールで誘うん躊躇しとったらこの先どうすんねん。相手がクイーンオブヘタレのだからよかったものの。謙也は頭かきむしって、今日中になんとしても誘うでーと自己暗示かけとる。いや自分で対処できるんやったら俺とか椅子とか学校の備品に当たるなや。あーもーこいつら世話かかる!とかに愚痴ったらきっと、そういう世話かかる奴らの世話焼くのが好きなんでしょうとにやにやされながれ言われるのは火を見るより明らかや。…可愛げゼロパーセントのにヘタレさ加減分けたればええんやないの自分ら。 *** 次の日、今日は自分の番か、言いたなるほどもでめちゃくちゃテンション低かった。顔に「どんより」って書いてあるで。廊下歩いてて壁にぶち当たる回数も5割増しってとこや。中学生にもなって前見て歩けんっちゅーのも間抜けな話やけど。 「何や今日様子おかしいで」 「せ、せやろか」 「俺の見とった限りではな」 「…私やばいわ」 が柄にもなくまじめな顔しとるから、どうしたんと聞くと謙也に勉強会の場所は謙也の家でええかと聞かれたのにまだ返事が出来とらんのだと言う。 「なんでそないなこと返事できへんの」 「私下心でいっぱいやもん!謙也くん家行くんやで!」 別にが下心でいっぱいでもとくに何も起こらへんと思うけど。謙也ももヘタレやし肝心なとこでうまくいかんやろ。 「普段通り接してればええんとちゃう?」 「二人っきりになったの、マネージャーやらんかって誘われたときだけなんや。緊張してまうから私アホなこと抜かすかもしれへん」 「大丈夫や自分アホなことなんて普段から山ほど言うとるから」 励ましになっとらんやん!ぶうぶう言うはさっきよりは明るい顔をしていた。ええやん二人っきりの機会ができて。からかい半分で言うたら、進展させたるで!とはにやっと笑った。 「えらい勝気やんか」 「がな、もっと勝気じゃないと他の女に忍足取られちゃうわよーって」 「ほな頑張りや、あとで報告してな」 朗報聞かせたるで。口角を釣り上げるがさっきまで壁に頭打ち付けとったんと同一人物だっちゅーことを、俺は信じたない。 →next |