がマネージャーになってもう一ヶ月は過ぎたやろか。も部に馴染んできたみたいやし目立つようなトラブルも起こっとらん。ただ一つ俺が気に食わんことは、接点が増えたっちゅーのに一向に二人が進展せえへんことや。接点が増えたから前より気楽に喋れるようになっとるし、ちょっと目合うただけで赤うなったりはせえへんようにはなった。お互い少しは進歩しとる、せやけどほんまにそれだけなんや。あとは変化も進展もあったもんやない。アドレス交換もしとらんらしい。二人ともヘタレすぎて見とるこっちが情けのうなってくるわ。どないしたらええんやろな、と考えとったところで携帯がやかましく鳴り出した。こんな遅い時間に誰や思って画面見たら『非通知』表示。嫌な予感しかせえへんかったけどとりあえず出てみた。 「はい?」 『こんばんは、です』 「…番号教えた覚えがないんやけど」 『ああ、に聞いたの。ごめんね急に電話しちゃって』 あのアホ気軽に人の番号教えやがって。明日しばいたろ。まあ相手はあのやし変に俺の番号拡散させたり必要以上に連絡してきたりはせえへんやろから、それが唯一の救いやな。しかし何の用もなしに電話してくるような女やない。ごめんね言うとったけど絶対申し訳ない気持ちは微塵もあらへんのやろな。 「そか、こんな時間にどないしたんや」 『と忍足のことでね』 受話器越しにくつくつ笑う声が聞こえる。ほんまに底意地悪い言うか他人が本気で悩んどることを面白がる女やな。悪い奴やないのは重々承知しとるけど正直だけは敵に回したないわ。 『マネージャーになって距離は縮まったし前より話す機会も増えたけど全然進展したようには見えないのよねーあの二人』 「おっしゃる通りや、情けないことに」 『あはは、白石がそれ言う必要はないでしょ。で、一つ提案があるんだけどね』 「ほう」 『って英語苦手でしょ?』 「…謙也は得意やで?」 『さっすが白石は物分かり良くって助かるわ、あの馬鹿とは大違い』 「あの馬鹿」はのことやな。ていうか物分かりいいて何や失礼な女やな。 「勉強会っちゅー名目で謙也の家に行かせたろか」 『それがいいと思う、お互い休日に会うとなると連絡先交換しとかないと不便になるしね』 「お前頭ええな」 『まあね』 否定せんところがらしい。は俺が思っとったよりもと謙也のことを心配しとるみたいで少しだけ意外やった。「は忍足なんかに渡すもんかー」言うて本気で妨害すると思っとった。何や優しいとこあんねんな。本人に言うたらたぶん当たり前でしょー言うて一枚上手に返されるやろから黙っとくけど。 『それじゃあ忍足に掛け合ってみて。わたしもをどうにか説得してみるから』 「おう、わかった。ほなお休み」 『おやすみなさい』 この話したら謙也も も真っ赤になって「ほんまにそんな幸せなことがあってええの!?」とか言うんやろな。今から楽しみや。 |