夏の大会も終わって先輩らは引退して、そんで引き継ぎやら何やらも一段落着いたところでついに私は入部した。

、二年、マネージャー頑張ります」

営業スマイル全開で言うと、相変わらず顔だけは可愛ええな、とか蔵が抜かしよったおかげで周りからは拍手と笑いが巻き起こる。光ちゃんだけ無愛想な顔しとるけどそれはいつものことや、慣れとる。今までマネージャー不足でタイム測ったりドリンク作ったりするのも部員が自分らでやっとったらしいから、いきなり忙しゅうなるんやろな。で謙也君の様子はというと、挨拶したらばっちり目が合うてへらっと笑ってくれた。やばいめっちゃかっこええわ。仕事頑張らな。


***


マネージャーの仕事始めて早二週間、思ってたよりは楽やけどそれでも忙しいことに変わりはあらへん。音上げるほどじゃないし、何より謙也君がかっこええからそんなん気にならん。

、私幸せ」
「お気楽なもんだね」
「テニスしとる謙也君めっちゃかっこいいねん」

そうかい、言うてはありえへん量の弁当を平らげる。小春ちゃんとユウジと三人して呆気にとられる光景をぼんやり眺めた。の胃袋は私らと作りが違うんやと思う。今日のの弁当、私のの三倍はあったで。

「確かに忍足はそれなりに顔かっこいいけどさ」
「それなり言うな」
「中身残念やしな」
「ユウジもまだまだやんなあ謙也君のかっこよさを理解できないなんて」
「はあ?」
「まあまあ、が楽しいならそれでいいんじゃないの」
はん楽しそうやでー、タオルとか渡すときめっちゃ顔赤なっとるし」

小春ちゃんのアホ何言うてんねん!誰にとは言わんかったけどには絶対バレるやろ!恥ずかしいことにバレてほっとかれたためしないねんで!絶対忘れた頃にも掘り返されるし今だって、

「ほーう、可愛いねえちゃん」

超意地悪い顔しとるで!怖いわ!小春ちゃんも便乗して「照れとるはんほんまに可愛ええんよー」言いよるから、ユウジが「浮気か!死なすど!」と喚く。小春ちゃん絶対わかっててやっとる、絶対そうや。

「ええなあ小春ちゃんはユウジに愛されとるなあ羨ましいなああ、私も愛されたいわ」
「いやも充分愛されとるで」

ユウジがそんなこと言うなんて珍しいな、明日あたり槍でも降るんとちゃうか。ていうか愛されるようなこと私してへんで。

「誰に愛されとる言うんや、蔵か、蔵なんか?」
「蔵リンちゃうやろー蔵リンははんのこと心配しとるだけやで」
「あっはは、そりゃまた情けない話ね」
は黙っとき…じゃあ誰や」
「誰ってそりゃけn「自分で考えなさいな」

にっこり笑ったが何か言いかけとったユウジの口にユウジの弁当箱を押し当てた。ユウジは涙目で口押さえとる。痛々しいな。だけは未来永劫敵に回したらあかん、思い知ったわ。

しかし私誰に愛されてんのやろ。家族かな。まあ嬉しい話やけど私は謙也君に愛されるんがいっちゃん嬉しいわ、とか言えるわけないやろ!何恥ずかしいこと考えてんねん私。

、今までの全部口に出とるで」
「よかったね自分の教室で昼ご飯食べてなくて!忍足に聞こえてなくて!プッ」
「何笑っとんのやのアホ!」
はんはほんまに気ィ抜くと可愛ええな」
「普段可愛くなくてすまんな…くそっ」

思ったことそのまんま口に出せるんやったら謙也君に告白できるはずなのに。あーヘタレやな私、ヘタレすぎて泣きたなってきたわ。部活終わったら光ちゃんに慰めてもらお、ぜんざい奢りで。



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