はどうやら男子テニス部のマネージャーをやることに決めたらしい。なんとなくニヤついていたのもどうもそのせいみたいだ。マネージャーやることになっただけでニヤついてどうする。一喝してみてもあんまり効き目はなかった。

、私」
「マネージャーの話ならもう耳にたこが出来る程度に聞き飽きたけど」
「ひどいわー」

が忍足にベタ惚れなのはちょっと見てるだけでもわかる。今謙也君と目が合うた!とかくだらないことで騒がれるこっちの身にもなっていただきたいものだ。

「音上げても知らないわよ」
「そんなん上げへん、謙也君に頼まれたんやし、謙也君のためにやるんやから」
「ああもうあんたのそういうところはめちゃくちゃ可愛いんだからー!」

普段は馬鹿全開なのにたまにときめくことを素で言うからこの子は可愛い。そりゃ忍足も惚れちゃうよね。逆にずっとと一緒だった白石がを意識もしてないのは理解しがたい。憎めない愛され体質の子だと思うんだけどなあ。白石には「可愛い妹」程度の認識しかないのかもしれない。勿体ない話だ。

「そういうところはって何や素直に褒めろや」
「可愛すぎて勿体ないわよねー忍足なんかには」

いましがたちょうどすれ違った忍足にも聞こえるように言うと忍足はびくりと振り返った。その拍子に忍足ととで目が合って、お互い顔を赤くしてすぐそっぽを向くもんだから思わずにやけてしまう。まあ可愛らしいカップルですこと。付き合ってないけど。

「な、何言うんや謙也君と私が釣り合うわけないやん」
「あんたそれ鏡見てから言いなさいよ」
「何言うとるん

忍足は面食いだからねーと適当に言ってみると追いうちをかけられたようには頭を抱えて呻きだした。おめでたい頭してるのは相変わらずなのね。美人のくせに。


***


がマネージャーやるってほんまに言うたんやな!?」
「言ってた言ってた」

同じクラスなんだから本人か白石に聞けばいいのにわざわざ隣のクラスの私に聞きに来るあたりが忍足らしいというかなんというか。忍足はほんまか、と何回か繰り返してからよっしゃ、と小さく呟いた。

「…もっと盛大に喜ぶと思ってたわ」
が入るんやったらプレーでいいとこ見せなあかんと思ってな。喜ぶだけやのうて気合い入れんと」

これには少し驚いた。忍足なんてただの馬鹿だと思っていたけれど、やっぱりテニスが好きなんだな。動機は少々不純だけれどもテニスに向けての意欲が増したなら、なんだも役に立ってるじゃない。

「ごめん忍足、ちょっと見直した」
「ん、そか?」
「ただの馬鹿野郎だと思ってたけどかっこいいとこあんのね」
「せやで、俺実はかっこええんやで」
「調子乗るな、かっこいいとこに見せられないで何言ってんの」
「…おっしゃる通りで」
「せいぜいいいとこ見せられるように努力しなさいよ、ほら帰った帰った」

追い払うように手を振ると、忍足も少し驚いたような顔をしていた。何かと思えば、

「何か今日のやけに優しいなどないしたん」
「は?」
「昼間に忍足にはは勿体ないとか言うてたから」
「勿体ないとは思うけど見込みはあるんじゃないかと思ってね」

ほんまに!?と忍足の目がきらきらし始めてそろそろ本気で面倒になりそうだったから蹴飛ばした。なんやひどいわーと忍足は呻きながら教室を出る。

もあんたのこと好きだよ、なんて口が裂けても言ってやらないんだから。あんたが自分で告白できるまでははあんたにとって高嶺の花のままなんだからね。それまで忍足謙也なんかに私の親友を譲ってなんてやるもんか。こんなことは、にも、絶対に、言わないんだから。



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